忍者ブログ

露草備忘録

〈火星三部作〉は『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』と『膚の下』(神林長平著、早川書房)で活動中。梶野少佐中心。

メモ、自分用、あるいは名前について

これまで、〈梶野少佐三部作(火星三部作)〉の共通テーマである「父と子」が、『膚の下』においてはやや退潮し、しかるに『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』とに存在した父の対になるところの母が『膚の下』では姿を消し、その母の位置を埋めるように梶野少佐がスライドしてきたことを指摘してきた。


しかし、ここで考えておきたいのは、間明彊志と長尾志貴(羅宇の志貴)と善田大志の名前に共通する「志」の字についてである。もちろん、よくある人名用漢字ですね、著者はこの字が好きなんですね、で話を終わらせても良いのであるが、羅宇の志貴と善田大志が、『膚の下』において確定的に明らかに父親である、ということを指摘しておきたい。つまりこの「志」の字が、間明少佐が疑似ではあるが父のポジションにあるということを補強している。


さて、『膚の下』における父の話をしたのだから、確定的に明らかな母とも比較しておこう。
母親であることがわかっているのは、ミウと早樹、そして帰還後の実加である。ミウ、早樹、実加に共通する漢字はない。補強しなければならない母が不在だから、と言えなくもない。みな二文字というのは、特に考えなければならない根拠が見当たらないので、ひとまずおく。


ではあるものの、以上のようなことは梶野少佐を語る上で、どんな役に立つのかが言えなければ屁のツッパリにもならないのである。不在の母は不在の月と呼応し、それは不在の梶野少佐とも呼応する。不在の梶野少佐とはなにか。母のポジションにスライドしてはきたものの、決して母たりえない梶野少佐であり、三部作全体の象徴の父たることを否定された、旧版のかつての梶野少佐のことである。
なんちゃって、言ってみただけ。

拍手

PR

コメント

コメントを書く