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露草備忘録

〈火星三部作〉は『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』と『膚の下』(神林長平著、早川書房)で活動中。梶野少佐中心。

『七胴落とし』感想

読了日は2009年12月22日だっていうのに、なかなか書けなかった感想の始まりですよ。
さて私が、主人公にしておおむね語り手の脇田三日月少年に言いたいことは一つだけです。
だってそれ以外は、他に何書いたって、自己嫌悪と同族嫌悪にまみれた、説教臭い上から目線のどうしようもない文章になりそうなので。ふっ、認めたくないものだな(以下略)。
どうにも読んでいて、とある男女が出会って恋をする話のはずなのに、いつまでたっても通りすがっているばかりで、こいつらさっさと知り合えよてな映画を観てイライラやきもきするような感じですね。ああでも、そんな風に思わせることこそ監督の狙いなんだし思う壺か! みたいな。


ま、ともかく、きらめいても爽やかでもなく何かに一途に打ち込んでもいず、どっちかというと暗黒の十代という、そんなごく普通の青春を送っている脇田少年は、いったいなんでまた月子が自分の生んだ幻かどうかで悩むのでしょうか。
やだもう、三日月が変な名前なのはそうだけど、「じいさんが刀を趣味にしていてね」(p.74)だけで、夕方、西の空に輝くあの細い月を差し置いて、国宝の三日月宗近がすっと出てくるような謎の転校生で刀剣マニアなオタクっ娘の美少女がいるわけないじゃないの。そんなのあなたの願望よ、願望。
いえ、世の中は広いから、そういう娘が実際にいて出会うことがないとも言い切れはしないわけですが。しかし、そんな逸材にしては刀のうんちくを語ったりしないですし、小狐丸じゃなくて良かったとか言いますしね。私は小狐丸の方がええし、藤四郎も悪くないと思うわよ?


それに自分の名前の三日月が、じいさんのつけた名前と思っているあたりがまだまだよネ。
そんなもの、祖父は宗近とつけたかったけれど、冷たい嫁が大反対。
「このオールド イズ ニューな感じがわからんか!」
「お義父さんの感性は古いんですよ。私の子なんですから」
てな感じでもめにもめたので、あいだをとって三日月で手討ちにしたんです。
とか、もうちょっと面白いことを考えなさいよ。じいさんの趣味だけじゃなくて、家族の不和と妥協の産物がぼくの名前だ、ぐらいのことは言ってみせたらどうなの。


あら、なぜか言いたいことが一つより増えているような気がするから、そろそろこの辺でやめましょう。
まあ、あれですわ、心配せんでも大人になるなんて単に歳食っていくだけのことと、そのうちわかりますわ。大人になったら。そして、わかった頃にはもう遅すぎるのです。
って、ナニこのありきたりな結論は!

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