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露草備忘録

〈火星三部作〉は『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』と『膚の下』(神林長平著、早川書房)で活動中。梶野少佐中心。

きたみたやった

先日、診断メーカーのキスのお題ったーで、
RTされたら梶野衛青が「どうか、笑ってください」と言って目を閉じている相手に口付ける話を書いてください。
という結果が出てRTされましたので、ツイッターで短文を書いていました。相手は順当に間明少佐で。
ちょっと流しっぱなしにしておくのはもったいないなと、字数の都合による表記を、やや改めて再録。


 破沙へ向かう予定の航空機が、フロアの窓ガラス越しに見えた。さらに破沙からカロリン基地へ移れば、もう地球ともお別れだなと間明彊志は思った。
 間明にとって地球の復興は、凍眠装置で眠っているあいだに終わる。目覚めるときは地球に帰還した後だろうし、主観的な時間は一瞬と変わらない。
 それでも二百五十年は、全てのものとの永遠の別れを覚悟させるに足る長さだった。
「彊志、約束通り見送りにきたよ」
 と梶野衛青が言った。待合所の椅子に座る間明は、自分の前に立った梶野を見上げると、「そうか」と頷いた。
 間明の隣に梶野は腰を落とした。ただおし黙り、ふたりは座っていた。
 近づく搭乗時刻に焦れたように、梶野が口火を切った。
「彊志、もうこれできみとも最後だね」
「そうだな。しかし帰還後に再会しないとも限らない。そのときはきっと衛青、おまえのほうが年上だ」
「生きていたらね」
「生きていないつもりか」
「かもしれない」
「それは、おれだって同じだよ」
 間明は二百五十年の時間を思って目を閉じた。主観的には一瞬だが、その長さはたかだか百年を生きる人間にとって、永遠とそう変わりはしない。梶野が間明の肩を抱いた。そして身を寄せると、
「もしも再会したなら、そのときは、どうか、笑ってくれ」
 と言って、間明に口付けた。


実に最後だけ取ってつけた感で、すんません。わりと精一杯でした。
なんかこう、自分が書くものに、もっと甘さがあってもいいと思うんですが、いまいち甘くなりませんね…。せめて愛だけはあればいいなと思っています。


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