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露草備忘録

〈火星三部作〉は『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』と『膚の下』(神林長平著、早川書房)で活動中。梶野少佐中心。

ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーンズ

今春時かけ3度目の実写映画化ということで、ここは一つ例の「時をかける少佐」ネタをやるべきだろうと思いました。が、一発ネタなもんで、アニメ版時かけのポスター等のあのポーズしてる梶野少佐しか思いつかんでしたよ。
しかし、そんなありがち(もイイよね)じゃ駄目だと、原作小説読んだ時の記憶や、原田知世版時かけを借りて観た時のことを思い出していたら、なんかよくわかんないものができました。


 火星の地下には、荒廃した地球を逃れてきた避難民の居住地区がある。
 さだめられた帰還の日まで、代代そこにひっそりと暮らす火星生まれの地球人の一人、高校生の梶野衛青は、ある日、唐揚げとご飯を食べていた。(かっ込むように優雅に)
 と、その時ローズマリー醬油の匂いをかいで、意識が遠くなる。気づけば自分の部屋のベッドで寝ていて起きたところである。夢の中で飯を食っていたのかしらんと思うのだが、その日を境に、梶野衛青は地下都市の平凡な日常に違和感を覚えはじめるのだった。

 幼なじみの間明彊志は、最近なぜかよそよそしい。時時、お前にはわからないという目つきをするようになった。同じく幼なじみの、近くの檀老夫婦の孫のアミシャダイと、いつも三人でつるんでいたはずなのに。変な感じは単に、彊志の付き合いが悪くなったからかもしれない。
 でも、何かがおかしいと思うんだ。ご近所の山下さんちの五つ子は、どうしていつもケイジとエリンの二人しか見かけないのだろう。次次に同じ顔をした少年四人に、街角で出会った。しかし四つ子の方はこの辺りにいただろうか、引っ越しなんて話もきかない。
 それとも、昔からそうだった?

 不思議な夢をみる。地球人が火星に避難するはめになった、地球-月間戦争に自分が参加している夢。月人との戦い、月の夜、知るはずのない過去の情景。なのに、あまりにも強い現実感に、いつもめまいがしそうになる。
 彼は夢の中では梶野大尉と呼ばれていて、いつしかそれは梶野少佐に変わる。
 そして、アミシャダイ。機械人。
 わが友、わが敵、わが過去にして未来――。

(以下、すべてアミシャダイによるセリフ)
「わたしはわたし自身と切り離され、わたしとなった。その時にいくつかの世界は、わたしをひとつのきっかけにして収束した」
「きみはわたしの、そうだな、いわば運命の糸と強い結びつきがあるようなのだ」
「それをわたしが喜んでいるとは思わないでほしい。きみが今のその多層的で不安定な状態になったのは、わたしの責任でもあるのだから」

(以下、同じ)
「きみはこの世界では、地球への帰還の日を、火星の地下都市で待ちながら暮らす、ひとりの火星生まれの地球人だった。きみはまた別の世界では、機械人との月戦争を戦い生き延びた、ひとかどの地球軍将校だった。そしてまた別の世界のきみは、戦後の荒廃した地球に生まれ落ち、既に失われたものを手にしたいと願う野心家だった」
「わたしは無限に存在する可能性が、無理やり折りたたまれたこの不安定な状況を、解消するために出ていく。わたしがいなくなれば、世界はあるべき姿をとるだろう」

(以下、同じ)
「この変化は不可避だ。きみの希望にかかわりなく。 しかし、幸運を、きみの魂に安らぎあれ、だ」
「忘れるな、きみはいつの日か、宇宙の海から地球の海を――」

(十数年後)
 食堂らしい部屋の中で、軍服を着た壮年の男性が白いご飯を唐揚げで食べている。ただようローズマリー醬油の香りに、眉根を少し寄せながら。
「梶野少佐」
 と誰かに呼ばれて、振り向いたその視線の先には、かれんだあががが…が…

(エンドロール)
時をかける少佐/愛は輝く舟/過去も未来も星座も越えるから/抱きとめて
(終)


これがなんなのか、私にもわからんのです。

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