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露草備忘録

〈火星三部作〉は『あなたの魂に安らぎあれ』と『帝王の殻』と『膚の下』(神林長平著、早川書房)で活動中。梶野少佐中心。

『帝王の殻』新旧比較4の補足

昨日は新旧比較よりも、アドバンスガードadvance guard についていろいろ書いていましたが、一晩寝ながらよく考えていると、ちょっと疑問が出てきましたので、今日は新旧比較じゃなくて、それについてやります。
まず、『あな魂』での「UN・アドバンス・ガード(UNアドバンスガード)」は、これは先発/先遣部隊でいいわけです。実際に『あな魂』#21で「玄鬼は予覚する。地球をめざして押し渡ってくる大艦隊を。やがてその先発隊(先遣隊)を肉眼もとらえることだろう」と、その後数行、それについての描写がありますし。つまり、『あな魂』執筆時点では、アドバンス・ガードが字義通り先発隊であって、だからこそ旧版の『帝王の殻』では、「地球連邦、先端防衛軍、梶野少佐です」と名乗るのであり、「アドバンス・ガード」ではなかったのだと考えられます。


しかし、みなさんもご存知のように、『膚の下』ではアドバンスガードがまるで国連軍(と呼ぶとして)のほとんどであるかのようになっています。あんまり私は軍隊のことに詳しくないので合っているかわかりませんが、そもそも、今後火星に避難する目的のもとにずっと地球で働いているアドバンスガード=先遣部隊とは何ぞやというものです。ということは、『膚の下』以降のUNアドバンスガードとは、先発/先遣部隊の意味ではなく、国連軍という大きな組織を指すことに変更されているわけです。
そこで、『あな魂』新版での梶野少佐の名乗りセリフが、「わたしはUNAG、UNアドバンスガード、一三一方面・先遣部隊の梶野少佐です」になっているのは、念押しではなく、UNアドバンスガードのなかの、「先遣部隊の梶野少佐」と言っていることになります。


さて、それでは火星三部作全体において、アドバンスガードadvance guardが先発/先遣部隊の意味では使われないことになったのだとしたら、いったいアドバンスとは何を意味するのでしょう。この辺はもう雰囲気で、advanceの意味として「前進、進歩、発達」(『ジーニアス英和辞典《改訂版》 2色刷』)等がありますので、そのあたりの前向きな言葉ということでいいんじゃないかと思います。
あと、またまた余談ですが、旧版の『あな魂』からガードマンが消えた件、トルーパーになっている件ですが、辞書引いていて気づきましたが、ガードマンて和製英語であって、英語ではガードマンとは言わないんですね。ガードマンではなくなったのは、そういうことなのかもしれません。


次回はばっちり新旧比較をしますので、5に続く。

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